供給源が重要です: マンガンの添加が乳牛の生産性に影響を与えます
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供給源が重要です: マンガンの添加が乳牛の生産性に影響を与えます

ダリル・クラインシュミット博士

ジンプロコーポレーション

微量ミネラルの研究において、マンガンは亜鉛や銅といった他の主要な微量ミネラルに比べて、後回しにされる場合があります。しかし実際には、マンガンは生命維持のために極めて重要な微量ミネラルであり、牛に給与する栄養素全体の中でも大切な役割を担っています。

マンガンは脂肪代謝、糖代謝、エネルギー生成に関わる酵素の補助因子であり、牛の健康のために重要な抗酸化物としての栄養素でもあります。さらに、コレステロール生成の補助因子でもあり、繁殖活動のためにもマンガンが必要です。

また、マンガンは糖タンパク質の生成も行います。糖タンパク質は結合組織や骨の形成のための前駆体となります。従って、乾乳期に極度のマンガン欠乏に陥ると、その母胎内にいる胎児が骨格形成不良(虚弱、奇形肢)となる可能性があります。

 

NRC要求量を超えた給与量

NRC2001における成牛のマンガン要求量は、およそ14〜20ppmです。体重、乳量、マンガンの吸収率(およそ0.75%)、増体、繁殖の状況(空胎もしくは妊娠およびそのステージ)を元にNRC要求量は算出されます。しかし、この要求量には鉄といった拮抗物質の存在やストレス(暑熱や移行期のストレスなど)、飼料中のカビ毒の存在、マンガンの吸収を下げたり、牛のマンガン要求量が上がるその他の要因については加味されていません。

実際のマンガン要求量はNRC要求量と比べて、泌乳牛では1.6倍、乾乳牛では2.7倍高いことが、ワイス博士とサーハ博士が2005年に行なった試験で明らかになりました。この不足分を補うためには、飼料中へのマンガン添加が必須です。

牛の生産性を最大限に高めるためには、適切に設計された飼料にマンガンを55〜75ppm添加することをジンプロ社では推奨しています。この添加量の一部分を、ジンプロ・ミネラル由来のマンガンで給与することをご検討ください。高単位かつ、より生体内利用率に優れるマンガン供給源を用いることで、牛の生産性の向上と健康な状態の維持が期待できます。

近年の試験では、ジンプロ・ミネラル由来のマンガンを増給することで、乳牛の乳熱が減少し、淘汰の危険性を低下させることが判明しました。

 

試験設定

アメリカ・カリフォルニア州セントラルバリーにある一般大規模農場で2017年に、アベイラマンガンの試験が行われました。この試験では、泌乳期飼料中でアベイラマンガン由来のマンガンを9ppmから20ppmに増給した場合に、牛の健康と生産性にどのような影響が与えられるかが調べられました。試験は分娩30日前から搾乳日数200日までを対象として、初産牛156頭、経産牛573頭が供試されました:

9ppm区: 計60ppmのマンガン添加量中、51ppmを無機ミネラル(硫酸マンガン)由来で給与し、残りの9ppmをアベイラマンガン由来で給与(n=356)。この添加割合は、ジンプロ社の過去何年間にも亘る従来の推奨。

20ppm区:計60ppmのマンガン添加量中、40ppmを硫酸マンガン由来で給与し、残りの20ppmをアベイラマンガン由来で給与(n=373)。

フリーストール牛舎で全ての牛を飼養し、分娩前は初産牛と経産牛を分けてそれぞれ別の群で飼養しました。TMR向け微量ミネラルプレミックスで等量のマンガンが全ての牛に与えられ、増給分の硫酸マンガン由来もしくはアベイラマンガン由来のマンガンを50㎖の糖蜜に混ぜて、個体ごとに給与しました。毎日健康状態の評価と、乳脂肪、乳たんぱく質、体細胞数を含む生乳検査を実施しました。

 

ジンプロ・ミネラルは乳熱と淘汰の危険性を減らす

本試験において、乳量、エネルギー補正乳量、乳成分、体細胞数、繁殖成績は、アベイラマンガン由来のマンガン20ppm区も9ppm区も大きく差はありませんでした。しかし、アベイラマンガン由来のマンガンを20ppm給与した牛では、乳熱の発生率が9ppm給与した牛に比べて50%減少しました。アベイラマンガン20ppm区の牛は、乳熱の治療がたった2.1%で、9ppm区では4.2%でした。

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両群における淘汰割合に有意差は見られませんでしたが、アベイラマンガン由来のマンガン20ppm区では9ppm区に比べて、斃死率が62%減少しました。免疫機能が活性化されると、大量のカルシウムを利用します。従って、マンガンが免疫機能を高めて乳熱を減少させた結果、農場内での斃死が減ったのではないかと考えられます。アベイラマンガン由来のマンガンを9ppm給与した区では、斃死率が6.1%であったのに対し、アベイラマンガンを増給した区では2.3%でした。

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マンガン添加の影響は、泌乳期が開始されてすぐに見られました。アベイラマンガン由来のマンガンを9ppm給与していた区において発生した斃死の85%が、搾乳日数30日以内に起きました。20ppm区における搾乳日数30日以内の斃死は、全体の57%でした。

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健康によってもたらされる費用対効果

2020年のアメリカの市場状況から見ると、アベイラマンガン由来のマンガンを20ppm給与することは、9ppm給与することに比べて、更新率の改善により5倍以上の費用対効果があると考えられます。

先述の試験結果から、マンガンの添加量を増やすことのメリットは明確です。それだけでなく、ジンプロ・ミネラルのような生体内利用率の高いマンガン供給源を用いて高単位のマンガンを添加することの重要性をご理解頂けると思います。

乳牛の飼料設計中にアベイラ・マンガンを添加することによって期待される反応の詳細についてのご質問ご相談は、弊社営業担当社にご連絡ください。