暑さに打ち勝て!暑熱ストレス管理と跛行予防
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暑さに打ち勝て!暑熱ストレス管理と跛行予防

オルトゥロ・ゴメス博士、獣医師

ジンプロコーポレーション

日が長くなって来ると、牛にとっての暑い夏は、我々感じるよりもっと早くに訪れます。日中の気温が上がってくるに連れて、生産者の皆様にとって暑熱ストレスによる負の影響への対処は頭の痛い問題だと思います。そこで、この暑熱ストレスの影響が、秋になって出てくる生産性に関わる他の問題を引き起こすことがあるのをご存知でしょうか?

それぞれの牛にとって、通常の身体機能を発揮して、普段通りに振る舞うことが可能な限界レベルというものが存在します。環境温度が高まって牛が暑熱ストレスを感じ始める(温湿度指数が68以上になる)と、余剰な熱を放散するために、牛は行動を変化させ始めます。

例えば、暑熱ストレス環境下で牛が最初に示す変化として、横臥時間の短縮が挙げられます。通常、牛は横臥すると体温が上がります。従って、体温を下げるために、より長い時間を起立状態で過ごさなければなりません。牛は代謝性のストレスからの回復と目標乳量達成のために、1日に12時間の休息が必要であるとされています。

暑熱ストレス環境下では、消化器官に向ける血量を減らし皮膚に流すことで放熱を助けます。この結果、腸の上皮細胞同士を結びあわせているタイトジャンクションが弱体化し、リーキーガットと炎症を引き起こす可能性があります。リーキーガットと炎症に関しましてはこちらの記事をご覧下さい。

これらの要因全てが即座に牛に影響を与え、飼料摂取量の減少や炎症増加による無駄なエネルギー要求量の増大によって乳量が減少していきます。さらに継続的にこのような変化が起こり続けることで、やっと気温が低下してきた秋になっても、跛行に悩まされることにもなるのです。

 

なぜ跛行は暑熱ストレスから遅れて発生するのか?

夏の暑熱ストレスが秋の跛行を引き起こす主な要因は3つあります:

  • 1つ目に、牛が横臥せずに、起立時間が長くなることが挙げられます。起立時間が長くなると、肢により負担がかかり、少しずつ蹄の角質のケラチン合成過程に影響を与え、病変が形成されていきます。
  • 2つ目の要因は、スプリンクラーといった暑熱対策システムが蹄の健全性に悪影響を与える場合があることです。湿気が高まることで角質のケラチンが柔らかくなり、さらなるダメージに繋がります。通路の水たまりやスラリーの蓄積は角質性の蹄病増加の原因にもなり得ます。
  • 3つ目は暑熱ストレスによる炎症反応の高まりによって、免疫反応を起こすために、本来角質のケラチン合成に使われるべきエネルギーと栄養素が奪われることです。この結果、少しずつ角質合成が減少して蹄の質が低下していき、秋に蹄病変が多く顕在化していきます。

 

暑熱ストレス管理と跛行減少のポイント

暑熱ストレスを原因とした秋の跛行を予防する最初のステップは、夏の暑熱ストレスを、栄養管理と暑熱対策システムを用いて正しくコントロールすることです。

栄養とジンプロ・ミネラル

牛のエネルギー摂取量を飼料中の濃度を上げることで実際に高められる方法は、ごく限られています。この方法では、他の消化上および代謝上の問題を引き起こすことがあるからです。従って、最初に生産者の方々が注力するべきなのは、暑熱ストレスが原因で跛行になる危険性が他よりも特に高い移行期牛と高泌乳牛に対して、最高品質で消化性の高い粗飼料を給与することです。また、牛に十分な量の水を飲ませることも大切です。

さらに、ジンプロ・ミネラルの添加もご検討ください。亜鉛、マンガン、銅は牛の免疫機能を維持する重要な役割を担っているだけでなく、質の高い角質のケラチン合成、上皮組織の維持、靭帯と腱の形成のための基礎物質としても働きます。

ジンプロ・ミネラルは直ぐに体内で活用される形状をしています。このような微量ミネラルを給与することで、牛がより多くの栄養素を吸収し、暑熱ストレスによって引き起こされる炎症反応を調整しながら、夏の間も品質の良い角質のケラチン合成を助けることで蹄全体の健全性を保って跛行を予防します。

暑熱対策方法

温度が23度を超え、平均湿度が50%を超えたら、農場ではまず空気の流れを高める換気装置を稼働させてください。換気装置は、本牛舎だけでなく、パーラーとクロースアップ牛群、そして乾乳前期牛群にも必要です。時速10kmの風を作り、1時間当り1,600㎥の換気容量が推奨されます。同じ湿度で温度が28度を超えたら、牛に定期的に水をかけるスプリンクラーを用いて暑熱対策を行うことをご検討ください。

 

暑熱ストレスの緩和、跛行の予防、生産性の増大

暑熱ストレスは、牛の跛行を引き起こす最も大きな要因の1つです。夏の間は暑熱ストレスによる乳量の減少が気になるかもしれません。ですが、秋になって暑熱ストレスの負の影響が続き、跛行として現れるかもしれません。換気扇、スプリンクラー、ジンプロ・ミネラルといった暑熱対策への投資は常に良好な費用対効果を示します。

毎日の牛の変化に合わせた戦略を打つと同時に、将来にも目を向けることが最良の管理です。暑熱対策を講じ、ジンプロ・ミネラルを飼料に添加することは、夏の暑熱ストレスによる負の影響を緩和しながら、秋に発生する跛行の予防も同時に行うことを意味しています。

暑熱対策の方法の詳細と、農場におけるジンプロ・ミネラル給与プログラムについては、弊社営業担当にお問い合わせください。

 

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