乳牛の暑熱ストレスを緩和する5つのステップ

乳牛の暑熱ストレスを緩和する5つのステップ

オルトゥロ・ゴメス博士、獣医師

研究開発・栄養学テクニカルサービス部門 酪農チームリーダー

ジンプロコーポレーション

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牛の跛行は様々な要因によって引き起こされますが、暑熱ストレスもその1つです。夏の終わりに蹄病の罹患数が増加すると一般的に言われていますが、これは暑熱期の牛の行動の変化や栄養の変化によるものであることに加えて、亜急性のルーメンアシドーシス(SARA)やその他の消化器性疾患にも関連があります。また、これらの問題は跛行だけでなく、乳生産効率の低下や牛の健康状態の悪化、早期淘汰の割合の増加といった悪影響を及ぼします。

乳牛は、THI(温湿度指数、下図)が68(気温20度)に近づくと、暑熱ストレスの兆候を見せ始めるとされています。

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これは、我々人間が暑さによってストレスを感じるよりも遥かに低いことにご注意ください。牛は暑熱ストレスを受けると、呼吸回数の増加、体温の上昇、飼料摂取量の低下、乳量の減少、繁殖成績の低下を示すことがあります。重度の暑熱ストレス環境下においては、放熱のために“パンティング”と呼ばれる、口を開けての呼吸が見られるようになります。乳量の減少と繁殖成績の低下を最低限に抑え、起立時間を短縮して新規の蹄病発生を減らし、子牛の出生時体重を落とさないために、暑熱ストレスに苛まれている状態を作らないように、可能な限り快適性を高めてあげましょう。

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酪農場において、暑熱ストレスを管理するためにできる5つのステップを検討しましょう:

 

1. 牛が十分な飲水量を確保できるようにする

牛が容易に水を飲むことができる環境を整えることが、暑熱ストレスを軽減する上で最も重要です。暑熱ストレスに苛まれている牛は、飲水量が20〜200%増加します。

牛の水の摂取量を最適化するためには、牛がパーラーに出入りする際に、清潔な水を直接摂取できる状態にしなければいけません。待機場所及び、飼槽から15m以内の場所に水槽を設置することが推奨されます。1つの牛群内には、必ず2つ以上の有効な水槽を設置しましょう。

牛の水の摂取量を高めるために、場所と数以外にもチェックするべきポイントがあります:

  • 水槽に最低でも7.6cmの深さの水が貯められた状態を維持できる、十分な水の補充率があるか確認する
  • 牛1頭辺り9cmの水槽の長さを確保する
  • 水槽内及びその周囲の漂遊電圧(浮遊電圧)を測定する
  • 多くの牛が飲水するピーク時に、十分水が補充できているか確認する
  • 常に水槽が清潔であるように管理する
  • 水にまつわる乳質特性を年に1〜2回チェックする

 

2. 待機場所、飼槽沿いの通路、牛群内にソーカーシステムを導入する

待機場所で牛の体を適切に冷やしてあげることで、暑熱ストレスを予防して、生産性が高い状態を維持できます。適切な牛体冷却が行われた牛では、1日の乳量が0.8〜2.3kgより多かったと報告している研究もあります。

牛の体を十分にずぶ濡れにできるくらい、水粒が大きくなるノズルを用いることが大切です。水粒が小さすぎると、牛の被毛の表面に断熱層が形成されてしまい、さらに体温を上げてしまうことがあります。

舎内温度が21度以上になったら、ソーカーシステムが稼働するようにします。温度の上昇に合わせて、稼働頻度も高めていきます。多湿環境下では、サーモスタットを設置して、より低い温度からより頻度高くソーカーシステムを稼働するようにすることが推奨されます。

ソーカーシステムは1頭の牛に1.3リットルの水を1度掛けることができる容量が必要です。スプリンクラーによって牛の背を濡らしたら、散水を止め、次の散水までの間にしっかりと牛の背が乾いて気化熱が発生するように設定します。

 

3. 循環型の換気扇を設置し、十分な換気を行う

換気扇の設置によって、空気の動きを早めることができますが、換気を高めるわけではないことにご注意ください。換気扇は、待機場所、牛床上、飼槽沿いに設置することが推奨されますが、牛床上のみに換気扇を設置して、飼槽沿いには設置しないフリーストール牛群も多くあります。

舎内温度が18度以上になったら換気扇を常時稼働させ、牛床上及び飼槽側通路に時速8〜13kmの風を流しましょう。この際、自然風の吹いている方向に合わせて風を流す方向を決めます。適切な間隔で換気扇を設置して、牛に向かって風を押し下げるように、角度を調節します。

換気扇とソーカーシステムを併用することが最も効果的です。もし両方を使用することができない場合は、牛体をより効率的に冷却するためには、低圧のスプリンクラーを設置することの方が、換気扇のみを設置することよりも有効です。

 

4. 十分な日陰をつくる

パドックや放牧地で牛を飼養する場合、日陰が必要です。木立などによって自然にできた日陰を用いるか、鋼材やアルミニウムを用いて人工的な日陰を作りましょう。地面に濡れた場所をつくらないように南北方向に向けて、1頭辺り3.7〜4.2㎡の面積を与えるように日陰の設置を行ってください。

 

5. 牛の“バンチング”を防ぐ

暑熱ストレスに苛まれると、牛は熱から逃れようと本能的に暗い場所を求めて歩きます。この結果、牛が牛舎内のある特定の場所で肩を寄せ合って集まり(“バンチング”と呼ばれる行動)、余計にストレスを受けます。

このバンチングを避けるために、牛舎内に日差しが射し込む側の横壁のカーテンを80%程度閉めたり、横壁に巻き下げ式の寒冷紗を設置することが推奨されます。壁面に光を通す素材を用いてしまうと、夏には強い日差しが牛舎内に入り込み、牛群内の光の強さにばらつきが生まれてしまうことから、このような素材は用いないようにしましょう。

バンチングの予防のために、牛群内におけるハエ対策も重要です。

酪農場における暑熱ストレスの緩和についてのさらなる詳細についてのご質問は、ご相談は弊社営業担当者までお問い合わせ下さい。

 

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