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酸化亜鉛を用いない離乳子豚の飼料管理

酸化亜鉛を用いない離乳子豚の飼料管理

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※この記事は、ヨーロッパにおける事例です。日本において、飼料添加物の「ミネラル」として登録されている亜鉛は炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、ペプチド亜鉛、硫酸亜鉛メチオニンなどあり、あり、酸化亜鉛を給与する際は獣医師の処方が必要となります。

 

2,000ppm以上の高濃度の酸化亜鉛給与は、離乳子豚における細菌感染症や下痢対策として長年一般的に用いられてきました。しかし、それも直ぐに変わるでしょう。

2022年6月からEUにおいて、高濃度の酸化亜鉛の使用が禁止されます。また、フランスにおいては、2021年の1月から使用が禁止されます。従って、養豚生産者は農場での細菌感染症を制御するための代替方法を探さなくてはなりません。

過去の記事で、高濃度の酸化亜鉛使用禁止に備えるための幾つかの飼養管理手法をご紹介しました。今回は、細菌感染症のリスクを軽減させるための飼料設計の変更において、特異的酵素の添加、飼料中のタンパク質量の削減、不活性繊維の添加、飼料の酸性化の活用に関してご紹介します。

 

特異的酵素の添加

離乳初期の子豚は体格が小さく、消化器系も未発達のため、酵素を添加することで栄養素の消化を促進させることが出来ます。酵素には様々な種類があり、それぞれが特定の炭水化物や脂質、タンパク質に効果を発揮します。更に、フィターゼ添加が離乳後子豚飼料に広く用いられており、多くの場合推奨量の3〜4倍量で添加されています。フィターゼ添加により、普段豚が利用することが出来ないフィチン酸と結合している亜鉛が放出されるため、その結果亜鉛の添加量を更に削減出来るでしょう。

 

タンパク質量を削減することで酸化亜鉛使用量を削減する

タンパク質内部にある多くのアミノ酸は、離乳子豚において不可欠な栄養素です。離乳期飼料にタンパク質を高濃度で添加することによって、日平均増体量が増加する一方、腸管の健全性が損なわれることが明らかになっています。特にタンパク質源が難消化性である場合に起こります。何故なら、難消化性タンパク質は、消化管の後部で有害微生物の餌となり、感染症や下痢発症のリスクを高めてしまうからです。またそれは高濃度の酸化亜鉛の非添加時に起こります。

2019年にSEGESデンマーク豚研究センターによって発表された研究から、飼料中のタンパク質量を3〜4%削減することで、子豚の消化器障害のリスクを低減出来ることが分かりました。数種類の遊離アミノ酸を飼料中に添加することで成長成績を損なうことなく、それを実現出来るでしょう。

飼料用タンパク質は、多くの異なったアミノ酸から構成されており、その中の幾つかは子豚の健康や生産性に必須ではありません。更に、摂取タンパク質のアミノ酸比率も、子豚の最適な健康と成長のために推奨されている比率を満たしていません。摂取アミノ酸と消化性遊離(合成)アミノ酸のバランスを保つことで、飼料中のタンパク質量を削減し、有害微生物の成長を抑制することが出来ます。そが感染症のリスクを軽減することに繋がります。

 

不活性繊維を用いて腸管の発達を促進

高濃度の酸化亜鉛給与への依存を減らしながら、腸管の健康を向上させるもう一つの方法が、不活性繊維(非消化、不溶性、低発酵性)を離乳期飼料中に添加することです。上記の繊維は、腸管の健康を制御し、微生物相のバランスを保つことに役立ち、有害微生物の定着を防ぐことが出来ます。

Schothorst Feed Researchによって実施された試験から、粗い小麦ふすまを高品質の離乳期飼料の濃度を薄めるのに用いることで、下痢発症リスクを高濃度の酸化亜鉛を用いた時と同等まで下げられることが明らかになりました。更に試験から、小麦ふすまを添加することで、非添加の飼料と比べて、日平均増体量が大きかったことも分かりました。このことから、高濃度の酸化亜鉛を用いずとも、強健な子豚を育てることが出来ることが分かりました。

 

飼料を酸性化させて、消化を促進

離乳前後の若齢豚の消化器系はまだ未発達のため、飼料を消化する能力が制限されています。タンパク質消化に欠かせない酵素であるペプシンが最も効果的に作用出来る胃内のpHは、2.0〜3.5の間です。しかし、若齢豚はpHを適値に保つために必要な塩酸を十分に生成出来る能力がありません。

塩酸は腐食性が強く、機材を損傷させるため扱いが難しく、単純に塩酸を添加するだけでは、消化を促進するための実用的な方法とは言えません。有機塩または無機塩を添加する最新の養豚飼料技術によって、酸性化を促進することが出来ます。酸性化させることには、2つの利点があります。

  1. 胃内のpHを制御し、栄養素の消化を促進します。
  2. 酸によって病原性細菌の成長が抑制され、下痢のリスクが軽減されます。この作用により、酸性化は離乳期飼料中の高濃度の酸化亜鉛を削減する新たな方法となるでしょう。
    また、炭酸カルシウムは胃内でpHの緩衝材として働くため、子豚飼料中の炭酸カルシウム量を出来る限り減らすことも、酸性化の促進に役立ちます。その為に、炭酸カルシウムを有機酸カルシウムに置き換えてみて下さい。

また、タンパク質も酸緩衝能力が非常に強いので、前述の様に飼料中のタンパク質量を減らすことも酸性化を促進させる方法の一つです。

 

禁止に備える:離乳子豚飼料設計とジンプロ・ミネラル

高濃度の酸化亜鉛給与は、簡便で安価な方法のため、離乳子豚における細菌感染症と下痢予防のために長年用いられてきました。2022年に高濃度の使用が禁止されるため、これらの問題に対応する飼料設計の新しい方法を模索する必要があるでしょう。その方法として、遊離アミノ酸を活用してタンパク質量を減らす方法と、飼料中に不活性繊維を添加する方法があります。

その他の方法として、ジンプロ・ミネラルを栄養プログラムに組み込む方法があります。アベイラ亜鉛は酸化亜鉛と比較して、吸収性がより高いため、子豚飼料中に添加することで、タイトジャンクションを強固にし、腸の健全性を向上させてくれることが証明されています。これにより、給与する亜鉛量を大幅に削減しても、下痢の発症を抑えることが出来るでしょう。

私たちの業界は、これまで豚肉生産の向上に貢献してきた技術が失われていくという課題に、常に直面しています。私たちの専門知識と献身的な取り組みは、新たな規制に対応する革新的な方法を見つけ出し、責任を持って豚を育て続ける原動力となるでしょう。

 

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