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高濃度の酸化亜鉛給与を用いずに、安定的な養豚を維持する

高濃度の酸化亜鉛給与を用いずに、安定的な養豚を維持する

ステファン・ランジャー博士

ジンプロコーポレーション

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これまで養豚農場では、感染症の制御や生産性を向上させるために、離乳直後の子豚に対して抗生物質や高濃度の酸化亜鉛を用いてきました。抗生物質は、ヒトに対する薬剤耐性菌の危険性を軽減するために、長年厳密に規制されてきました。また、高濃度の酸化亜鉛の薬理的利用は獣医師処方によって未だ認められており、EUにおいても一般的に用いられています。しかし、それが変わりつつあります!

離乳子豚における亜鉛の栄養要求量は80〜100ppmですが、2,000ppm以上といった高濃度の酸化亜鉛給与が細菌の成長を抑え、下痢を軽減・予防することが試験によって明らかになっています。その結果、増体成績が向上することが報告されています。

EUでは2022年6月に、離乳子豚への高濃度の酸化亜鉛給与が禁止されます。またフランスでは、それより前の2021年の1月から禁止されます。そして、子豚への亜鉛の使用は、総亜鉛摂取量で150ppm以下に制限されることになり、養豚生産者の方々は細菌感染や下痢を抑制する新たな手段を探さなくてはならなくなります。

離乳前、離乳中、離乳後の子豚の健康と栄養を管理することは経営上重要ですが、それは1つの魔法の様な資材で達成出来ることではありません。その代わりに、起こりうる問題を抑え、生産性への影響を最小限にするためには、複数の代替品を飼料や飲用水中に添加するのと併せて、入念な飼養管理プログラムを行うといった複合的なアプローチが必要となるでしょう。

 

何故高濃度の酸化亜鉛給与は禁止されるのか?

EUにおいて子豚飼料中の高濃度の酸化亜鉛添加に対する規制が行われるのには、様々な理由があります。
その中のいくつかをご紹介します。

 

環境汚染を低減する

規制実施の大きな理由は、子豚の亜鉛排出による環境への懸念です。豚の糞尿は肥料として使用されますので、高濃度の亜鉛を土壌に散布することで、鉄といった他の微量要素の吸収に影響を与える可能性があります。その結果、植物のクロロフィル合成に悪影響が生じてしまいます。もう1つの懸念事項としては、動物の肝臓中及び地表水への亜鉛の蓄積です。

 

菌の薬剤耐性獲得の阻止

これは、豚において抗生物質の使用が制限された理由と殆ど同じです。近年の試験から、高濃度の酸化亜鉛給与が、子豚の腸管内で多剤耐性大腸菌の割合を増やす可能性があることが分かりました。更に、銅と亜鉛、抗生物質への耐性遺伝子が、多剤耐性サルモネラとメシチリン耐性ブドウ球菌の動物由来分離株にも共存していることが分かりました。この耐性遺伝子の遺伝的連鎖は、金属が動物やヒトの病原体における薬剤対抗性の獲得に影響を与える可能性を持っています。

 

禁止することの潜在利益

腸内微生物叢の変化を最小限に抑える

高濃度の酸化亜鉛給与が有害細菌の成長を抑える一方で、ラクトバチルスといった正常な腸管機能に必要な有用細菌の成長も同様に抑えてしまいます。これらの有用細菌の成長が抑えられてしまうと、正常な腸内細菌叢のバランスが崩れてしまい、高濃度の酸化亜鉛給与を止めた後に、下痢を含む更なる問題を引き起こすことになります。

 

フィターゼの効果を維持する

高濃度の酸化亜鉛給与は、子豚飼料に添加されている消化を向上させるフィターゼの効果も減少させてしまいます。

 

高濃度の酸化亜鉛給与に対する依存度を減らすための簡単なルール

厳格なバイオセキュリティー方法を取り入れる

予防は細菌感染を抑えるための最良で安価な方法です。従って、バイオセキュリティーの基準を厳格にするべきです。その中には、導入前後の豚舎の洗浄と消毒、乾燥も含まれます。また、導入前に施設のダウンタイムを確保することも効果的です。それにより、前に居た群の細菌や病原体に子豚が暴露されることを抑えるのに役立ちます。飼料運搬トラックが農場に入らない、または運搬のために農場に入る前には消毒をすることを徹底して下さい。更に、各豚舎に入る前後に、長靴を確実に洗浄して下さい。

 

適切なワクチンプログラムを実践する

各農場には、それぞれの環境と特有の問題がありますので、群の健康状態を常に確認し、感染刺激に対するワクチンプログラムを立てることが重要です。適切なワクチンプログラムを実践することで、細菌感染を抑制または排除し、高濃度の酸化亜鉛給与に対する依存度を下げることが出来るでしょう。

 

舎内の温度管理を改善する

舎内の温度管理は、より注意を払う必要があるポイントです。単に平均温度を制御するだけではなく、昼夜の温度差を出来るだけ小さく保つようにして下さい。昼夜の温度差が5〜10℃でも子豚にとってはとても大きく、細菌感染の可能性を高める余計なストレスを与えることもあります。

 

飼料管理で離乳ストレスを最小限に抑える

離乳は子豚にとって非常にストレスのかかる時期であり、多くの子豚で離乳後最初の数日間は餌を食べないことがあります。従って、離乳前に適切な飼料管理を行うことが、子豚が離乳後すぐに餌を食べられるようになり、高濃度の酸化亜鉛給与を必要とすることなく、摂取した亜鉛の効果を最大限に高めることに役立つでしょう。その1つの方法が、離乳前の子豚に固形飼料を給与することです。これにより、子豚に固形飼料とはどの様なもので、どこにあり、離乳後にどの様に食べれば良いのかを理解させます。離乳した後は、母乳の様な匂いと味のする飼料を給餌するようにして下さい。

 

配合飼料にジンプロ・ミネラルを添加する

高濃度の酸化亜鉛を給与せずとも、総量として150ppmの亜鉛を処方した子豚飼料で、子豚の健康と免疫を助けることが可能です。アベイラ亜鉛の様なジンプロ・ミネラル由来の亜鉛を、酸化亜鉛と部分置換または総置換して給与することで、腸の健全性を向上させ、豚が細菌感染に対して迅速かつ強固な免疫反応を獲得することに役立ちます。その結果、高濃度の酸化亜鉛を給与せずとも、成長や生産性の向上が促進されるでしょう。

 

今から対応を始めましょう

高濃度の酸化亜鉛給与は、フランスでは2021年1月から、その他のEU諸国は2022年6月から禁止されます。これらの規制の準備をし、群の健康を向上させるために、生産者の方々は子豚の栄養と管理の見直しを始めるべきです。

養豚生産においてどの様に変化に対応していけばいいかに関するご質問、ご相談は弊社営業担当者までお問い合わせ下さい。

 

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