飼料代をコントロールする7つのポイント
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飼料代をコントロールする7つのポイント

ジャニス・ウォルフィンガー

ジンプロコーポレーション

最近どの分野を見ても、品物やサービスが供給不足に陥っており、価格も上がっています。燃料代、食品代、配送料など、供給が需要に見合っていません。飼料代の高騰もこの1つです。

旱魃のような気候条件に加えて、物流混乱や供給問題から、穀物在庫も減少しており、価格が高騰し続けています。USDAの報告によると2020年6月から2021年5月の間で大豆粕価格は48%上がりました。飼料原料であるコーンや大豆の価格が上がると、それ以外のタンパク質原料の価格も上がっていきます。経営に悪影響を及ぼす原因となるでしょう。

農場において飼料費高騰に対応する策はまだ残っています。飼料戦略の確立を、管理獣医師や飼料設計士、そして土壌管理学者に至る全て専門家のチームに導き出して欲しいところです。

 

単価の高い飼料を給与する以外の肉牛栄養戦略

費用対効果を最大限高めるためには1年間を通じてこれらの戦略を用いることが大切です。即ち、今すぐ始めるべきです!その7つのポイントをご紹介します。

  1. 繁殖牛の妊娠鑑定

粗飼料在庫が不足している場合、空胎の繁殖母牛に給与するのは費用がかかり過ぎている状況です。最後の人工授精日もしくは本交で雄牛と離した日からおよそ60日後に、妊娠鑑定を行うようにしてください。まだ行なっていないのであれば、すぐに実施しましょう。まだ間に合います。

 

  1. 繁殖牛の妊娠維持

妊娠鑑定を行った後、授精不可牛を除いた後継牛及び繁殖母牛の妊娠状態を維持させることが大切です。分娩に至らずに子牛を失った場合、それまでの母牛に対する飼料費が無駄となってしまいます。妊娠期の飼料にアベイラ4のような有機微量ミネラルを添加することで、胎児の生存割合を高め、妊娠状態を維持できることが判明しています。サウスダコタ州立大学で2019年に行われた試験では、アベイラ4を給与した後継牛では授精後17日目から60日目において受精卵の生存率が11%改善する(73% vs 62%)という結果が得られました。

 

  1. 牛のボディコンディションスコアを測定する

繁殖農場において飼料の過剰給与を避けるためにボディコンディションスコア(BCS)を測定しましょう。目標値は5.5〜6です。分娩時においてこの範囲のBCSに到達させることが大切です。この値を超えると飼料費を無駄に払っているということになりますし、生産性と繁殖性に悪影響を及ぼす可能性があります。

単純に、後継牛群を体重の重い牛と軽い牛の2つのグループに分けるだけでも好影響を及ぼすことが証明されています。体重の重い牛へ過剰に餌をやることなく、体重の軽い牛に対して増体に必要なだけ飼料を分配してあげることができます。適切な飼料代で繁殖成績を高め、農場の経営を改善する方法と言えるでしょう。この試験は後継牛で行われたものですが、経産牛においても体重の重い軽いで群を分けることで同様の結果が期待できると考えられます。

 

  1. 粗飼料中の多量ミネラルを分析する

乾草の基本的なNIR分析は比較的安価で、飼料中の一般栄養素と多量ミネラルの組成を測定することができます。例えば、粗飼料分析を行わないがために過剰にリンを給与している農場は珍しくありません。飼料設計士と協力して粗飼料分析を行い、目標の生産性を得るための要求量に見合った適切な飼料設計を行うことで、飼料費用を節減することができます。

 

  1. コバルトを給与して粗飼料の活用率を上げる

農場で給与する飼料は一般的に粗飼料がベースになっており、その消化性が生産性向上と飼料費削減の鍵となります。1つの方法として、少量のコーンを給与するということがあります。母牛の体重の0.3%までのコーンを1日に給与する(590kgの体重の母牛でおよそ1.8kgのコーン)ことで、繊維消化性に好影響が及ぼすことが期待されます。しかし気をつけてください。過剰な給与は繊維消化性に悪影響を及ぼします。その他に繊維の活用率を上げる方法として、COPRO*を給与することで粗飼料の消化性が改善します。

もう1つ、粗飼料が成長するにつれて栄養素の含量は低下することを覚えておいてください。収穫が遅れた粗飼料を給与する場合には飼料設計士の方と相談して、低下した分の消化性とミネラル含量を検討した上で飼料給与を行ってください。

*ジンプロ社の有機コバルト製品(日本での販売はありません)

 

  1. 農場において代替できる粗飼料もしくは飼料原料の使用を検討する

乾草が手に入りにくい場合、コーンサイレージやコーン茎、麦稈といった供給が安定していて価格が見合うエネルギー及びタンパク源の代替品の給与をご検討ください。地元に工場があれば野菜クズ、パンクズ、穀物カスなど、一般的に使われることのないものも給与の検討に値するかもしれません。

 

  1. 放牧地を整備する

冬が終わりに近づくと、春のことを考える季節を迎えます。即ち、放牧飼養においては次の放牧期間についてです。1ヶ所の牧区に牛を残しておくと、他の牧区の牧草が大きく伸びます。

母牛が全ての牧区を自由に行き来できるようにして管理放牧すると、牧草は十分な光合成を行うだけの表面積を得て、より早く成長する前に食べられてしまいます。春前に牧区を分けて管理することで、春により豊富な牧草を供給することができます。適切な放牧地管理について、地元の土壌管理の専門家や大学の研究者にそれ以外の方法について尋ねてみるのも良いでしょう。

 

飼料費用が高い中でも利益を確保する

飼料費の高騰下にあっても、コスト削減や生産性を高いまま維持する方法が存在します。

ジンプロ社の肉牛研究技術員は皆様の農場経営を一歩前に進めるお手伝いをすることを楽しみにしております。我々は肉牛農場の利益を高めるための製品と技術情報という包括的なプログラムを有しています。ジンプロ社の肉牛プログラムの詳細について、弊社営業担当員にご連絡ください。

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