免疫システムがどのように動物を守るのか

免疫システムがどのように動物を守るのか

マルコ・レベッロ博士、獣医師

家禽主任研究者

ジンプロコーポレーション

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動物生産におけるウイルスの影響シリーズ:第2号

動物がウイルスに感染する原因は複数存在します。典型的な原因は、経口感染と空気感染です。また、動物は汚染されている表面や物質を直接触ることでも感染することがありますし、稀に交配時に感染することもあります。

例えば、イボの原因であるウイルスは、そのウイルスに汚染されている患部の表面を直接触ることで感染します。患部の表面だけではなく、畜舎の柱や壁、ブラシなども含まれます。また、特に乳牛において、乳頭炎や偽牛痘は搾乳機を介して感染するウイルスの一例でもあります。

一度、動物の免疫システムが体内のウイルスを認識すると、ウイルスを排除しようと免疫反応が開始されます。この過程は、ウイルスが臨床症状を引き起こすまでにかかる時間(潜伏期間)によって、早まったり遅くなったりします。

異なるウイルスに動物が感染した際に、免疫系がどのように働くのかを確認してみましょう。

 

免疫システムの活性化

免疫システムは、細胞やタンパク質、酵素による複雑なネットワークで構成されており、動物の健康状態を監視するようにプログラムされています。免疫システムは、体内に侵入する恐れのある細菌やウイルス、寄生虫、花粉だけでなく、蜂やダニに刺された際の毒素も検知して反応します。また、ストレスや怪我、環境変化にも同様に反応します。

ウイルスが皮膚や粘膜層、血管内膜といった体の防御層を越えた時に免疫システムはその侵入を検知します。そして免疫システムはサイトカインと呼ばれる信号を送り、助けが必要であることを知らせます。これにより、感染箇所に白血球が動員されます。

感染箇所で最初に反応するのは、食細胞と呼ばれる白血球です。これらの細胞は、有害な異物や細菌、更には死滅もしくは瀕死の細胞を貪食することで体を守ります。食細胞には2種類が存在します。

  • 哺乳動物の好中球や鳥類の偽好酸球は小さい顆粒球で、即座に損傷箇所に現れて、細菌を貪食します。
  • 単球は大型の白血球で、感染約3日後に現れて、好中球や偽好酸球が残した、細菌や異物、死細胞片を貪食します。

マクロファージや好中球は、最初に現れて、ウイルスを貪食し破壊する働きをします。その後、ウイルスの断片を表面に提示して単球に信号を送り、侵入してきたウイルスへの攻撃をより特異的な方法で継続させます。

ウイルスに感染すると、免疫システムとウイルス間で競争が起こります。ウイルスは、細胞が他の細胞と異なる形に変形するまで、細胞内に潜伏します。この期間はウイルスが優位で、新たな細胞に感染するための十分量の子孫を作ります。

免疫システムがこれらのパターンを認識し、炎症過程を開始する頃には、ウイルスはすでに他の細胞に拡散しています。

マクロファージとリンパ球は、進行中のウイルス感染を特定するために重要な役割を果たすだけでなく、ウイルス感染から体を守るのにも役立ちます。

更に、ウイルス感染から数時間以内で生成される自然防御機構の一つが、インターフェロンです。これは、体内で産生される分子で、一部のウイルスを死滅させる役割を果たしますが、全てのウイルスを死滅させるわけではありません。

 

ウイルス感染による急性疾患と慢性疾患

一部のウイルス感染では、臨床症状をすぐに呈します。ライノウイルスやインフルエンザ、コロナウイルスのような感染症は、1〜14日で発症します。レトロウイルスであるHIV、牛白血病ウイルス、マレック病ウイルスのような感染症は、感染後臨床症状を呈するまで数週間または数ヶ月、場合によっては数年かかります。

レトロウイルスは増殖が非常に遅いので、発症させるのに十分量の細胞に感染するまで時間がかかります。馬伝染性貧血ウイルスのような一部のレトロウイルスでは、感染していても動物は日常的に赤血球を生成することができます。例えば、もし感染した馬が毎日10個の赤血球を損失し、9個を生成しているのなら、馬が貧血になるまでの時間は長くなるでしょう。

もう一つの例として、人間におけるHIV感染があります。HIVに感染している人は、すぐには骨髄細胞やヘルパーT細胞の枯渇は起こりません。日々少しずつ減少していくので、それらが不足するまでには時間がかかるでしょう。

 

どのくらいの期間、ウイルスは体内に存在するのか?

一般的に、ウイルス感染は体内で少なくとも10日間は続きますが、その後も存在することがあります。例えば、ヘルペスウイルスは、自身を体の一部だと思わせて体を騙し、免疫システムの監視から逃れて、長期間潜伏することができます。これにより、免疫システムがウイルスを攻撃、除去するために炎症反応を開始するのを防ぐことができます。一度、哺乳動物がヘルペスウイルスに感染すると、一生持続感染します。しかし、常に臨床症状を呈するとは限りません。ヘルペスウイルスに感染して、体内のどこかにウイルスが潜伏していても、一生で一度しか発症しない人もいます。

一度、病原体が細胞を攻撃すると、免疫システムはそれが“自己”か“非自己”かどうかを特定します。免疫システムが、病原体を“非自己”と認識すると、病原体を除去するために炎症反応が開始されます。場合によっては、免疫システムが自己に過剰に反応し、自己を攻撃することもあります。家畜において、この現象はみられることはあまりありませんが、猫や犬においてはみられることがあります。この現象を自己免疫疾患と呼びます。人間での例としては、狼瘡や天疱瘡、関節リウマチなどがあります。

 

ウイルス制御におけるワクチンの役割

ワクチンは感染を防ぐのではなく、感染症の重症度を軽減する働きをすると理解しておくことが重要です。例えば、インフルエンザ予防接種を受けても、医者は「これでインフルエンザには感染しません」とは言わないでしょう。医者は「もしインフルエンザの予防接種を受けた型と同じウイルスに感染したとしても、発症しないか、ワクチン非接種の人ほど長引かないでしょう」と言うでしょう。

ワクチンを接種すると、感染後すぐに血中に抗体が産生され、それがウイルスに付着し、臨床症状を呈する前に除去します。

抗ウイルス剤や殺菌剤、消毒剤はウイルスの感染力や環境中での生存能力を低下させる点では同様の効果を示しますが、完全に感染を防ぐことはできません。

 

ウイルス防御における栄養素の影響

適切に設計された飼料は、動物をウイルス感染から守るために重要です。

若齢期は免疫システムの発達において重要な時期なので、早期から栄養補給することが特に重要です。若齢の動物は、しっかりと免疫細胞と免疫組織を発達させるために、十分量の栄養素が必要です。

ビタミンとミネラル(多量、微量共に)が欠乏しなければ、細胞は感染を早期に認知することができます。更に、ビタミンとミネラルが充足していると、細胞の働きがより良くなり、より多くの抗体をより迅速に産生することができます。より迅速に抗体を産生することで、ウイルスの複製を防ぎ、感染に反応し、感染を制御することができます。

セレンや亜鉛、マンガンといった微量ミネラルは、抗酸化物質として働き、炎症過程で生成され、細胞に広範囲に損傷を与えるフリーラジカルを除去します。

次の記事では、微量ミネラルがウイルス感染防御においてどのような役割を果たすのかをご紹介します。

 

 

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