猛暑時の暑熱ストレス管理
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猛暑時の暑熱ストレス管理

マルコ・レベッロ博士、獣医師

ジンプロコーポレーション

鶏舎設計の技術は、他の畜舎設計の技術より進んでいます。蒸発冷却やトンネル換気、屋根断熱、壁断熱の様な冷却システムが養鶏場における暑熱ストレスによる悪影響を軽減させることに役立ちます。

優れた鶏舎設計によって。鶏は高温環境下(33.3℃(92F)、相対湿度60%)でも生き延びることが出来ますが、アメリカ南部では、気温が37.8℃(100F)を超えることもあります。その様な気温になると、冷却システムが追いつかなくなり、鶏群が暑熱ストレスの影響を受けやすくなります。

適切な鶏舎設計に加えて、ジンプロ・ミネラルを給与することで、暑熱ストレスを軽減し、出荷体重まで目標通り到達させることに役立ちます。

 

鶏の暑熱ストレスは、様々な問題に繋がる

地域によって異なりますが、鶏の生産寿命は、ブロイラー鶏で35〜37日、レイヤー鶏で2年弱です。特にブロイラー鶏では回復に費やす時間が短いので、暑熱ストレス管理において僅かな失敗も許されません。レイヤー鶏においては、暑熱ストレスの悪影響は気温が適温に戻った後でさえも、数日間に亘り卵質に影響を及ぼし続けます。

鶏の体温が上昇すると、熱放散を増加させるために、血流を内臓に向けるよりも皮膚へと送り込みます。そして、消化管内膜の粘膜上皮細胞(単層の上皮細胞)が利用可能な酸素量(低酸素症)と栄養量の減少が起こります。その結果、タイトジャンクションが損傷し、病原体や毒素が血流に侵入し、最終的にリーキーガットを引き起こしてしまいます。

鶏は、蒸発冷却量を増加させるためにパンティングを行います。1gの水を蒸発させるために維持エネルギーを540カロリー消費します。その結果、レイヤー鶏では卵質の低下、ブロイラー鶏では飼料効率と成長率の低下を引き起こしてしまいます。

 

暑熱管理のための鶏舎設計

一般的に鶏舎では、2つの冷却システムが主に用いられています。最も用いられているものが、トンネル換気です。トンネル換気システムとは、大型ファンを鶏舎の片側に設置することで気流を作り出し、舎内の熱気を外に送り出す方法です。

蒸発冷却システムは空気中の熱を用いて、水を液体から気体へと変化させる方法です。このシステムは、エネルギーを放出することで鶏や鶏舎内の熱を奪います。

蒸発冷却システムは以下の様に構成されています。

  • パッドを介して水を滴下する蒸発パネル。パネルを風が通り抜けることで水が蒸発し、環境中の空気が冷却されます。トンネル換気によって鶏舎内に気流を作ることで、蒸発パネルの効果を向上さることが出来ます。
  • 噴霧器またはスプリンクラー。これらは時間が設定されており、鶏舎内の熱を取り除く微小な水のミストを定期的に噴射します。

高湿度条件下(80%以上)では、蒸発性放散や蒸発冷却システムは効率が悪くなります。高湿度条件下では、対流冷却(気流)が熱放散させるための唯一の代替方法です。適切に点検することが、鶏舎内の冷却システムが効果を発揮するためには重要ですので、十分に気密性と気流量があるか、屋根と壁の断熱材の状態は良好かを点検して下さい。

 

暑熱ストレス時の状態を改善するための栄養と飼料プログラム

猛暑時には、生産者は夏用の栄養と飼料プログラムの実施も検討すべきです。

鶏は本来、猛暑時に飼料をあまり食べません、それ故、栄養専門家や生産者は飼料摂取の減少を補填するためにより栄養素の高い飼料を給餌します。脂肪はより効果的なエネルギー源のため、脂肪と炭水化物の比率の上昇が起こります。鶏が飼料を摂取すると、体温が上昇し不快感を感じてしまいます。そこで、脂肪をより多く給与することで、代謝エネルギーの利用が少なくすみ、体温の上昇を抑えることが出来ます。

消化性アミノ酸を飼料中に添加することも暑熱時には重要です。濃厚飼料と許容限界レベルまでタンパク質を減らした飼料を給与することで、熱量の増加を抑えることが出来ます。減らしたタンパク質を補い、栄養素の摂取量を一定に保つためには、アミノ酸の割合が適切である必要があります。また、飼料栄養プログラムの電解質バランスが適切であるかも確認しておく必要があります。鶏がパンティングを始めると、血液がアルカリ性になる傾向があり、結果としてナトリウムが減少してしまいます。電解質は、ナトリウムと塩化物、カリウムのバランスを適切に保ち、血液中の緩衝材としての役割維持に役立ちます。飼料1kg当たり242~300ミリ等量の電解質を添加することを推奨しています。更に、ビタミンCとビタミンEの添加量も増やすべきです。

猛暑時における他の懸念事項は、飼料摂取量が制限されることです。その代わりに、日没後にライトを当てることで、より快適に過ごさせ、その時間に飼料摂取出来るようにすべきです。

 

暑熱時にジンプロ・ミネラル給与量を増やす

ジンプロ・ミネラル特に亜鉛、マンガン、セレンの添加量を増やすべきです。

亜鉛は消化管の上皮細胞間の結合を強固し感染時にタイトジャンクションを維持することで、リーキーガットの発生や関連して起こる、腸における炎症発生の減少に役立ちます。

フリーラジカルと抗酸化物質のバランスが悪くなると酸化ストレスが発生してしまいます。亜鉛、銅、マンガン、セレンはフリーラジカルを除去し、細胞膜を酸化損傷から保護する抗酸化物質に大きく関わってします。それ故、これらのミネラルの要求量は暑い時期には増加します。

夏の暑い時期には、栄養専門家や生産者はアベイラ亜鉛由来の亜鉛40ppm、またはアベイラZ/M *由来の亜鉛とマンガンそれぞれ40ppmを通年添加量に加えて上乗せ添加することを推奨しています。またアベイラセレン*由来のセレン添加量を0.2ppm増加させ、アベイラクロム*由来のクロム0.4ppmを添加すべきでしょう。

鶏舎設計の技術は、暑い時期の暑熱ストレスによる影響を軽減させることに役立ちます。冷却システムでは追いつかない様な暑い地域では、ジンプロ・ミネラルの添加量を増やすことで、鶏をより快適で生産性の高く保つことが出来るでしょう。

ジンプロ・ミネラルを養鶏飼料栄養プログラムに組み込むことに関してのご質問、ご相談は弊社営業担当者までお問い合わせ下さい。

*注:日本で取扱のない製品もございます。

 

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