なぜ鶏肉の質に酸化ストレスが影響するのか
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なぜ鶏肉の質に酸化ストレスが影響するのか

シベレ・トーレス博士

ジンプロコーポレーション

鶏肉重量の約75%を水が占めています。従って、筋肉中での水分保持能力は、鶏肉の品質を高く維持するために非常に重要であると同時に、養鶏業界で非常に深刻な課題でもあります。ドリップロスが多いと、肉の見た目や食感、栄養価に悪影響を与え、食肉処理業者や小売店において経済損失となります。ドリップロス及び鶏の水分保持能力の低下には酸化ストレスが直接影響しています。

鶏肉のドリップロス及びクッキングロスは、生産者から処理場まで、更にはスーパーマーケットや消費者の家庭などといったサプライチェーンの全過程に影響を及ぼす問題となっています。ドリップロスとは、貯蔵時に生肉から水が漏出する現象です。クッキングロスとは、調理中に肉から水が失われることを言います。

過剰に筋肉が水を失うことは、以下の様々な理由から問題となります:

  • 消費者において、新鮮な鶏肉であってもドリップロスが多いと、パック内に多く液漏れが見られて見た目が悪く、ジューシーさや柔らかさなどの嗜好性が低い。
  • 鶏肉及びタンパク質の質が悪いことで、消費者は満足しない。
  • スーパーマーケットでの陳列期間が短く、廃棄量が増える
  • 生産者や処理業者において、生及び調理済み肉の販売可能な重量が少ない
  • 液体が有害微生物を増殖させるため、食品の安全性に関するリスクが増加する

これらの要因は、ナゲットやパテ、そのほかの冷凍鶏肉製品を製造販売している会社の収益性低下に繋がります。

水分損失が大きくなることは、タンパク質の質が低下することに繋がります。なぜなら、肉の水分保持能力は、筋肉におけるタンパク質状態に影響を受けるからです。そして、各飼養ステージにおいてタンパク質の質に影響を与える要因は多く存在します。その一つが酸化ストレスです。飼料摂取量の減少や暑熱、過密飼育などのストレスに晒されている間、鶏は酸化ストレスの引き金となるフリーラジカルを多く生成します。その他に酸化ストレスを引き起こす要因として、脂肪源やワクチン反応、マイコトキシン(カビ毒)、高度などがあります。そして、フリーラジカルは、動物が生きている時も、屠殺後もタンパク質の質と機能に影響を与える細胞膜を損傷させます。この損傷によって、加工時や貯蔵時、調理時に肉から水分が失われてしまいます。しかし、抗酸化物質、特にセレンとビタミンEを養鶏栄養プログラムに組み込むことで酸化ストレスを軽減し、フリーラジカルを中和させることで水分損失を防ぐことが出来ます。

 

セレンとビタミンEの抗酸化作用

鶏も人間や他の動物と同じように、フリーラジカルの様な物質を自然に生成しています。フリーラジカルと抗酸化物質のバランスが生理機能において重要です。もし、フリーラジカルが体内の制御能力を越えて生成されると、酸化ストレスが起こります。動物は、様々な抗酸化防御システム層を活性化させることで自身を保っています。そしてそれが正常に機能するかどうかは微量ミネラルに依存します。この様な状況下では、鶏体内のセレンの蓄積量がフリーラジカルを除去及び中和し、酸化ストレスを軽減するために重要となります。

従って、飼料中に適切な微量ミネラル源を添加することが非常に重要となります。特に、亜鉛及びセレンは抗酸化反応に重要なミネラルであり、飼養中だけでなく、屠畜後の貯蔵時においても肉質を保つために重要です。

最近の研究から、暑熱ストレスに晒された鶏にアベイラ亜鉛由来の亜鉛を給与することで、腸管の健康が向上し、酸化ストレスが軽減され、その結果、胸肉重量の増加及びドリップロスの軽減に繋がったことが明らかになりました。

ビタミンEも抗酸化物質として重要ですが、異なる方法で作用します。脂肪が酸化された際のフリーラジカルの生成と移行を抑制する連鎖破壊型、脂溶性酸化防止剤として働きます。

セレンとビタミンEを適切に活用することで、相乗効果で酸化ストレスを制御し、鶏肉の肉質を向上させることが出来ます。

 

セレンの蓄積量を高めて産肉量と肉質を向上させる

鶏において、高ストレス環境下では、セレンの蓄積量を高めることがフリーラジカルを中和させるために重要です。そのためには、最も生体内利用率が高い優れたセレン源を選択しなければなりません。アベイラセレン*由来のセレンは、吸収率が高いため、より多くのセレンを体内に吸収出来ます。それにより、抗酸化防御機能をサポートでき、処理場へ輸送後も抗酸化物質として作用し続けるでしょう。

*日本での取り扱いはありません。

イタリアの七面鳥農場で、アベイラセレンとビタミンEを給与した際の肉質と産肉量における影響を調べる試験が実施されました。結果として、アベイラセレンとビタミンEを添加することで、以下の結果が得られました。

  • 七面鳥の胸肉におけるセレン含有量が106%増加した
  • ドリップロスが減少した
  • クッキングロスが減少した
  • 肉質と産肉量が向上した

この試験結果より、私たちは、生肉処理業者及び加工食品業者においても、同様にアベイラセレンを用いることで、高い投資利益率を得ることができるのではないかと考えています。

 

ドリップロスを抑えて、利益を向上させる

鶏の酸化ストレスを抑えることで、ドリップロスとクッキングロスを抑えることができ、その結果、消費者の需要に応えることの出来るより高い品質の鶏肉をより多く生産出来るでしょう。そしてそれが、フードチェーン全体を通して高い利益を得ることに繋がります。

鶏における抗酸化作用に関してのご質問、ご相談は弊社営業担当者までお問い合わせ下さい。

 

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