飼料効率から利益向上とコスト削減を算出する
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飼料効率から利益向上とコスト削減を算出する

ジェフ・ウェイヤー博士

ジンプロコーポレーション

酪農家としてモニタリングを行うべき大切な項目の1つに、飼料効率があります。これは乾物摂取量に対する乳生産量の比率です(1kgの乾物摂取によって、何kgの生乳を生産したのか)。あなたの牛がどれほど効率的に摂取した餌を乳に変換しているかを見ることで、早期に収益性を推測することができます。

飼料効率を飼料設計のみから考えている場合が多く見受けられます。もしくは飼料中に添加した栄養素や添加剤のみでの飼料効率向上からしか考えないこともあります。しかし、飼料効率を最大限に高めるためには、多岐に亘るアプローチが必要です。給餌管理、カウコンフォート、暑熱対策、労務管理といった様々な要因も、乳牛の飼料効率に多大な影響を及ぼすことがあります。これら全ての分野を観察・評価することをジンプロ社は「体系的な飼料効率」と呼んでいます。農場全体をより広範囲に亘って観察し、改善可能な部分を細かく見極めます。ジンプロ社では農場における最も大きなボトルネックを見つけ、改善していく方法を検討するお手伝いを行っています。

より少ない飼料で安定的に搾ることが出来れば、農場全体の利益が向上します。乾物摂取量にかかる費用の観点から、体系的な飼料効率を向上させる1つのポイントとして挙げられるのは糞尿の減少ですが、これは度々過小評価されています。糞尿の量が減ることによって、大きく労賃と除糞費用を低減することができます。しかし乾物摂取量が減少しても、十分な乳量を搾って体系的な飼料効率を改善しなければ、利益を損なう場合があります。

以前の記事で、飼料効率の重要性と最適な乳生産量を確保し、農場の収益性を向上させるための飼料効率の改善方法についてご説明させて頂きました。本稿では、農場の飼料効率を改善することで費用を抑えて利益を向上させる実践的な例を紹介します。それではまず2つの鍵となる指標をご覧ください。

IOFC(Income Over Feed Cost:飼料代よりもどれくらい収入が多かったか)と糞尿の生産量です。

 

飼料効率を改善することによるIOFCの向上

体系的な飼料効率が影響を及ぼす重要な指標の1つがIOFCです。IOFCはエネルギー補正乳量による収入から飼料費を引くことで求められます。それでは体系的な飼料効率の向上がどの程度IOFCに影響を及ぼすのか見てみましょう。下の表は私が最近訪問した農場で行った会話を元に作成したものです。

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この表は1日の乾物摂取量を24.5kgで固定した場合に、エネルギー補正乳量が増加することでどの程度IOFCが向上するかについて示しています。この際、飼料費は1日7ドル、エネルギー補正乳量による収入は1kg当り0.35ドルとして試算しました。

この表から、1日のエネルギー補正乳量が36.5kgの時(飼料効率は1.49)、IOFCは5.88ドルとなっています。

ここから飼料効率が4%向上して1.55になった場合、1日の乳量は38.0kgとなりIOFCは6.39ドルとなります。

さらに飼料効率が4%上がり、この例の最大値に至った(1.61)と仮定すると、乳量は39.4kgとなり、IOFCは6.90ドルまで改善されます。

この数値を達成することは不可能ではありません;これほど大きな改善には時間がかかりますし、農場内における様々な分野の見直しが必要になるかもしれません。そのためには飼料設計や粗飼料品質、削蹄プログラム、蹄浴方法などの変更を必要とする場合があります。

IOFCが農場の利益性を明確に反映していない状態であっても、この数字は飼料に用いたお金がいかに効率的に乳代に転換されているかの関係をモニタリングする上での簡単な指標になると考えられます。

 

考えるべきこと: 飼料効率を上げることで、堆肥処理費用が減少する可能性

飼料効率は糞尿の発生量にも影響を及ぼします。農場において大量の糞尿が発生していると、その処理のために用いる労力と機具に多大な費用がかかります。

エネルギー補正乳量が変わることなく乾物摂取量が減少して飼料効率を改善することができれば、牛が排出する糞尿の量も減ります。この結果、農場においては労賃を低減できるだけでなく、窒素とリンの排出量が減少するので環境へも好影響を与えることが期待できます。

改めて、飼料効率が改善されることで糞尿の発生量がどの程度減少するかについての実例を、簡単な表で示します。先ほどの表と異なりこのケースでは1日の乳量が36.3kgで固定し、乾物摂取量を削減できた場合を見ています。

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この表から、1日の乾物摂取量が24.5kgの時、即ち飼料効率が1.49の場合は1日1頭当り73.5kgの糞尿が発生しています。この数値は、100頭規模の農場では1年間におよそ2,700トンの糞尿が発生しているという試算に基づいて計算しています。

飼料効率が4%改善されて1.55となり、乾物摂取量を23.6kgに抑えられた場合、100頭当りでは年間で糞尿を96トン削減できます。さらに飼料効率を4%改善し1.61まで向上できて1日の乾物摂取量を22.7kgまで抑えられると、100頭当り年間で192トンもの糞尿を減らすことができます。

さらに、乾物摂取量を4%減らすことは飼料費にも好影響を与え、農場におけるコスト削減に貢献すると考えられます。

 

労力を抑えて、農場の利益を上げる

IOFCを高め、糞尿の排出量を抑えることで収益の改善とコスト削減を行うことができ、農場経営を良好に進める一助になると考えられます。飼料効率から検討してみて、農場全体の効率を改善するという目標に向かってみてください。農場における体系的な飼料効率の改善についての詳細は、ジンプロ社の営業担当者にご連絡ください。

 

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