子牛における初乳の重要性
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子牛における初乳の重要性

アダム・ガイガー博士

ジンプロコーポレーション

牛にとって生涯で最も重要な食事は、子牛が飲む初乳です。大切な抗体である免疫グロブリン(IgG)は、母牛の妊娠中において胎盤を通過することができません。従って子牛は基本的に、機能的な免疫システムを持たずに生まれてくるのです。新生子牛が自分で免疫システムを働かせるようになるには、生まれてから3〜4週間程度かかるとされています。この間、子牛にはサポートが必要です。これが、子牛が初乳によって受動免疫を受ける理由になります。

子牛の初回哺乳時、初乳中のIgGが子牛に受動免疫として移行されます。この受動免疫が出生後最初の3〜4週間、子牛を疾病や感染から守ります。

受動免疫の成功のために、子牛は少なくとも150gのIgGを摂取する必要があります。受動免疫が確立されることによる成績向上がデータで認められています:

  • 出生後60日目において、5%多くの子牛が生存している。
  • 育成期の増体向上と、将来的な乳生産量の増加
  • 2産以降までの残存頭数の増加

農場ではさらに、初乳管理の優先度合いを上げて受動免疫移行が達成されることで、獣医師診療費が子牛1頭当りおよそ$10減ることにも期待ができます。

新生子牛が確実に高品質の初乳を摂取できているかを確認することが重要ですが、初乳管理においてはIgGの給与量だけが唯一の重要な要因というわけではありません。

 

初乳管理の5つのQ

子牛がIgGの受動免疫を確立できているかを評価するために、農場では初乳管理に関する5つのQを見てみてください:品質(Quality)、量(Quantity)、迅速さ(Quickness)、清潔さ(Quite Clean)、数値化(Quantify)です。

 

品質(Quality)

暑熱ストレスや牛の扱い方、群移動ストレス、害獣問題といったストレスは初乳品質を低下させます。もし牛がストレスと戦うために栄養素を用いてしまうと、高品質な初乳を生産するための栄養素が少なくなってしまいます。同様に、疾病に罹患した牛は多くの栄養素を炎症反応に費やしてしまうために、初乳品質も低下してしまいます。

初乳品質に影響を与えるその他の問題は、乾乳期間の長さです。乾乳期間は45〜60日とすることが望ましいです。この部分についてはあまり多くの研究はなされていませんが、乾乳期間が短すぎる場合、十分なIgGを生産し初乳中に入れるための時間が足りなくなります。乾乳期間が長すぎる場合、母牛がIgGを再吸収してしまうかもしれません。

乾乳期の飼料にジンプロ・ミネラルを添加することも、初乳品質を高めます。1日1頭当り10gのアベイラ4を給与していて、さらにアベイラ亜鉛を添加して有機亜鉛を40ppmまで強化した農場では、初乳品質が平均で24%ほど向上しました。

 

量(Quantity)

農場では、子牛が確実に十分量のIgGを初乳から摂取していることを確認してください。初乳の給与量は、初乳中のIgG濃度によって変動します。例えば、1リットル中に50gのIgGを含有している初乳であれば、受動免疫確立のために最低でも3リットルの給与が必要です。給与量の考え方として、初乳を何リットル給与するのかではなく、IgGを何g給与するのかでお考えください。子牛はIgGを欲しているのであり、初乳の量を必要としているわけではないことにご注意ください。

 

迅速さ(Quickness)

母牛の初回搾乳までの時間を長く待てば待つほど、母牛から搾ることができる初乳のIgG濃度は低下します。ある試験では、分娩後初回搾乳まで6時間待った場合、IgG濃度がおよそ20%低下しました。

子牛の出生から初乳給与まで長く時間が空いてしまうと、子牛がIgGを吸収することができる効率も落ちていきます。生まれ落ちてすぐの状態で、子牛は初乳からIgGを50%吸収する能力があります。出生から6時間経つと、この能力は30%以下にまで低下します。

 

清潔さ(Quite Clean)

哺乳器具や加温器具が汚れている場合や初乳の熱処理・低温殺菌を行わない場合、初乳中の細菌数が増加します。細菌はIgGの吸収を阻害します。細菌数の高い初乳を給与すると、子牛が疾病に罹患しやすくなります。子牛への哺乳器具に使う洗剤の使用方法(使用温度、コンタクトタイムなど)に厳密に従い、細菌数を管理可能なレベルで維持しましょう。

 

数値化(Quantify)

初乳給与からおよそ24時間後に、受動免疫が確立されているかどうか確認することが大切です。これら4つのQがしっかりとなされているか評価することをお奨めします。子牛の血清中のIgGを実際に測定することは難しいですが、獣医師のご協力の下、数頭でも評価して、農場における初乳給与プログラムの確立をご検討ください。もし受動免疫の移行に失敗している場合、農場内の管理に何らかのミスがあると考えられます。初乳管理の5つのQを再度見直し、改善が必要であれば実践してください。

 

子牛に初乳代用乳を給与する場合

初乳代用乳の給与には、以下の3つの方法が考えられます:

  1. 母牛由来の初乳の完全な代替としての給与
  2. 母牛由来の初乳への添加
  3. 免疫刺激物としての給与

初乳代用乳を使用する際には、次の項目を検討してください:

  • 初乳給与前に、初乳品質を推定できるデジタルのBrix糖度計を用いて、全ての母牛由来の初乳の数値を測ることが推奨される。
  • Brix値が25%を超えている初乳は高品質であり、給与が可能。
  • Brix値が18%以下の場合、その初乳は低品質であり、給与するべきではない。代わりに初乳代用乳を用いて150gのIgGを給与することが推奨される。双子や難産で生まれた子牛には、免疫的に不利な場合があるので初乳サプリメントの給与を検討する。
  • Brix値が18〜25%の場合、初乳の品質は中程度である。この初乳には、初乳代用乳でIgGを50g足す必要がある場合がある。
  • 疾病が蔓延している農場では、全ての子牛に初乳代用乳を用いることも検討する。品質に関わらず母牛由来の初乳を飲ませないことで、疾病の垂直感染を防ぐ。
  • 出生後にIgGを150g給与することに加えて、最初の1〜2週間程度、免疫刺激のために初乳代用乳で10〜20gのIgGを給与することを検討する。アメリカ・カリフォルニア州で1,000頭を超える子牛を供試した試験で、免疫刺激物として初乳代用乳を給与した区では、斃死率が6.6%から2.0%に下がった。

 

ジンプロ・ミネラルは初乳品質を向上させる

初乳管理の5つのQに注意すると同時に、農場の飼料設計にジンプロ・ミネラルを組み込むことも、子牛が受動免疫を確立して良いスタートを切る助けになります。

アベイラ4とアベイラ亜鉛の給与方法の詳細については、弊社営業担当にご連絡ください。


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