肉用牛の肥育農場における肢蹄の問題は経済損失が大きい
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肉用牛の肥育農場における肢蹄の問題は経済損失が大きい

ドワイト・キッキーファー

農場において健康で利益をもたらしてくれる牛を生産しようとする時、肢蹄の状態も確認してください。健全な肢蹄を持ち、跛行していない牛は農場全体における費用対効果を高めてくれます。今日の肥育農場の成功のためには、跛行予防と護蹄管理が必須になっています。

肉用牛の肥育農場における跛行は新しいものではありませんが、現在の跛行原因として増えてきているのが趾皮膚炎です。

 

趾皮膚炎とは何か?

趾皮膚炎はヒゲイボとも呼ばれることのある蹄病で、肥育農場での発生が増えています。趾間フレグモーネの発生状況には及びませんが、その伝染性の高さから、農場内における早期発見が重要です。趾皮膚炎は蹄周囲の傷から始まります。生々しい鮮赤色もしくは黒い円状のびらんと皮膚の炎症(皮膚炎)が蹄球のすぐ上部に現れます。傷の縁に白い盛り上がりが形成され、長く伸びた毛のようなものや厚くイボ状の形成物が見られることもあります。

農場で趾皮膚炎の予防と管理を検討する場合、この疾病がどのように経済損失をもたらすのかを考える良い機会です。

 

牛の跛行は経済損失を伴う

牛の跛行は深刻な経営上の問題です。アメリカ西部の5軒の大型肥育牧場で、1,843,000頭以上の牛を対象とした試験結果をいくつかご紹介します。

13.1%の牛に健康上の問題で治療が行われました。この治療牛の16%は跛行が原因とされ、斃死理由の5%を占めました。

跛行牛の70%で肢蹄疾患が認められました。

肥育継続不能による販売全体の内70%が跛行牛でした。跛行による除籍時の販売価格は、素牛購入時価格の53%に過ぎませんでした。これらの淘汰跛行牛は平均で導入から85日で販売されており、導入からわずか4.5kgしか増体していませんでした。

アメリカの養牛業界では40年以上に亘って趾皮膚炎の研究が続けられていますが、いまだその確実な原因は分かっていません。ぬかるんだ牛群での飼養といった衛生状態の悪化、薬剤によるものもしくは直接的な皮膚の外傷といった危険要因は判明してきています。皮膚のバリア機能が低下すると、細菌が皮膚を貫き、組織の奥深くまで侵入していきます。

アイオワ州立大学の獣医診断家畜医療学科助教授ポール・プラマーが、趾皮膚炎の研究を行っています。現在の研究現場では、原因菌をトレポネーマという細菌であると考えています。この疾病の進行初期には、トレポネーマは病変部に現れないことがプラマーの研究から示されています。この結果は、他の細菌が疾病の進行プロセスを進めていて、後にトレポネーマが暴れやすい環境を作っている可能性が示唆されています。

肥育牛向けの飼料にジンプロ・ミネラルを添加することで、健康的な皮膚の形成と蹄の健全性維持といった牛の健康状態の改善が報告されています。

 

経済的な影響緩和のための微量ミネラル

ウィスコンシン大学獣医学部のドルテ・ドッファーは2017年に、肉用去勢雄牛における微量ミネラルと趾皮膚炎の発生についての研究を発表しました。この試験では去勢雄牛に、ジンプロ・ミネラルを用いた特殊な処方の飼料を給与した場合(ジンプロ区)と、等量の微量ミネラルを無機ミネラル由来で賄った場合(対照区)とを比較しました。この試験は長期的に行われ、一般の肥育農場で1,077頭の去勢雄牛に給与が行われました。この試験では、ジンプロ区と対照区共に60日の馴致期間を設け、馴致期間後牛が出荷されるまで給与が継続されました。

馴致期間後において、観察による趾皮膚炎発生割合増加の相対リスクが、ジンプロ区と比較して対照区において有意に高いという結果が得られました。進行性の趾皮膚炎病変(M2病変)が確認された去勢雄牛は、試験期間中にM2病変がなかった去勢雄牛と比較して、増体成績、最終出荷体重、温枝肉重量に負の影響が見られました。

肥育農場での跛行による生産性の低下に伴う経済損失を見たその他の試験から、下記の影響が認められています。

  • 同様の健康状態の牛でも、M2病変を持つ去勢雄牛は有意に体重の減少が見られ、約10.06kgの差があった。また、温枝肉重量も平均で5.5kg少なかった。
  • 同様の健康状態でも、跛行牛では平均日増体量が5.5%低かった(1日1.55kg vs 1.6kg)。
  • 仕上げ期(導入後121日から出荷まで)に跛行と診断された感染牛は、肥育期間が14.3日延長した。

様々な飼養形態で跛行による経済損失を調べる試験が行われています。すのこ床の農場もあれば、片屋根牛舎で飼養したもの、パドック飼養の農場もあります。さらに、これらの試験を見た生産者の方は、経験則からこれらの値は保守的な試算なのではないかと言われます。理由の1つとして、趾皮膚炎の診断と治療には多大なる労力を伴うことが挙げられます。

 

牛の健康上の問題

こういった蹄病罹患牛に適正な処置を施すことは、牛が健康に毎日を過ごすこと(ウェルビーイング)に関わる問題です。まず考えるべきは牛に痛みやストレスがないかと、牛が自然な行動を行うことができるかどうかです。

去勢雄牛が歩様を変化させたり、横臥状態からの起立の仕方を変えたりすることからも分かるように、跛行は痛みを伴います。跛行牛は飼槽から離れた場所にいる時間が長く、痛みから飼槽に行くのも大変になるために、飼料摂取量が減少します。跛行は自由に動き回ったり、同居牛とコミュニケーションを取るといった牛の自然な行動の発現を阻害します。

これらのウェルビーイング上の負の影響によって、牛の回復が遅れたり、肥育日数が延長したり、治療のための費用や時間がかさむこと、増体の悪化、斃死の危険性の増大といった深刻な経営への影響が出る場合があります。肢蹄の健康状態を正しく管理しなければいけません。感染性の蹄病については正しく判断して適切な治療を行うことが、健康状態の維持と跛行牛の回復を促します。その結果、農場から淘汰されることなく、望ましい体重までの成長も期待できます。

もし皆様の農場で趾皮膚炎が発見されてしまったら、根絶は難しいとお考えください。ただ、コントロールすることは可能です。ジンプロ社のアベイラプラスを含んだ、画期的な護蹄管理のための微量ミネラルプログラムが開発されました。このプログラムは牛の健康状態の維持と趾皮膚炎原因菌の感受性を下げることを目的としています。

肉用牛の肥育農場における肢蹄の問題に関するご質問、ご相談は弊社営業担当者にお問い合わせ下さい。