ITMNS 2021 国際微量ミネラル栄養学
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暑熱ストレス、腸の健康とジンプロ・ミネラル

暑熱ストレス、腸の健康とジンプロ・ミネラル

マーク・ウィルソン博士

養豚繁殖生理学者

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暑熱ストレスは家畜経営に多大な経済損失をもたらす事があります。例えばアメリカの養豚生産業界全体では、暑熱ストレスによる年間損失額が9億ドルにも上ると試算されています(Pollmann, 2013)。その内訳は、約4.5億ドルが育成〜肥育群で、残りの約4.5億ドルが繁殖群です。

これらの試算を考慮すると、農場の冷却システムに対する投資が多く普及しているという事実は驚くべきことではありません。しかし、冷却システムは必ずしも経済的に相応しい訳ではなく、機械の故障が予期せぬ暑熱ストレスを引き起こすこともあります。

 

暑熱ストレス:動物の体内では何が起こっているのか?

動物が暑熱ストレスを受けると、深体温が上昇し、熱放散を増やすために胃、消化管、その他内臓などの内臓組織よりも、皮膚表面に多くの血液を送り込もうとします。内臓組織の血流が減少すると、酸素量の減少(低酸素症)と、消化管を覆っている腸粘膜上皮細胞(上皮細胞の単層)が利用できるエネルギー量の減少が引き起こされます。その結果、腸粘膜上皮細胞間を縫合しているタイトジャンクションが弱まり、病原体や毒素が血流に侵入し、最終的にリーキーガットと呼ばれる状態に陥ります。

動物が暑熱ストレスに曝されると、飼料摂取量が著しく減少することが分かっており、これは代謝熱を減らすためのメカニズムであると仮説が立てられています。飼料摂取量の減少が、暑熱ストレスにより生産性を低下させる大きな要因です。しかし、飼料摂取量の減少だけが暑熱ストレスによって生産性が低下した全ての要因であると説明することは出来ないでしょう。

更に、体温を下げようとして起こる呼吸速度の上昇によって、酸素と窒素のフリーラジカル生成が増加します。その結果、腸管のタイトジャンクションが損傷または破壊されてしまいます。重度の暑熱ストレスは、腸絨毛の高さの低下と幅の増加、潜在的な腸粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊といった様な腸管の形態変化を引き起こします。そして、LPSやエンドトキシンに腸壁から血流へ侵入されやすくなり、免疫反応を引き起こすことになります。

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亜鉛:タイトジャンクションにとって重要な微量ミネラル

亜鉛は、感染刺激時にタイトジャンクションを強固に保ち、腸管の健全性を維持するために重要な微量ミネラルであることが、複数の試験から実証されています。また、亜鉛がタイトジャンクション構成タンパク質と熱ショックタンパク質の生成を増加させる事も試験から明らかになっています。更に、亜鉛は抗酸化作用にも大きく関わっています。酸化ストレスが初期のリーキーガットに大きな影響を与える事もあります。亜鉛の給与がリーキーガットの低減に影響を与えることも試験より明らかになりました。

アイオワ州立大学で、急性暑熱ストレスがどの様にリーキーガットに関与しているかどうかを実証する試験が実施されました。アベイラ亜鉛の様なジンプロ・ミネラルを給与する事で、消化器系の成長能力と健全性を向上させ、リーキーガットの発生を低減させる事が試験から明らかになりました。

この試験では、体重62kgの32頭の雑種豚を用い、4つの処理区に無作為に割り当てました。

  • 処理区1(適温区):硫酸亜鉛120ppm給与、適温条件下(21℃、湿度70%)。飼料は自由摂食。
  • 処理区2(適温-制限給餌区):硫酸亜鉛120ppm給与、適温条件下(21℃、湿度70%)。飼料摂取量を制限。この処理区では、2つの暑熱ストレス処理区と同量の飼料を給餌(処理区3、4:自由摂食の17%)することで、対照環境下との比較を行なった。
  • 処理区3:(暑熱ストレス-対照区):硫酸亜鉛120ppm給与、急性暑熱ストレス条件下(37℃、湿度40%)。飼料は自由摂食
  • 処理区4(暑熱ストレス-アベイラ亜鉛区):総亜鉛120ppm(アベイラ亜鉛由来亜鉛60ppm、硫酸亜鉛由来亜鉛60ppm)給与、急性暑熱ストレス条件下(37℃、湿度40%)。飼料は自由摂食

予想通り、暑熱ストレス条件下の豚は直腸温度の上昇、呼吸数の増加、飼料摂取量の減少が確認出来ました。また、この試験では、暑熱ストレス下の豚の体内で何が起こっているのかにも着目しています。

試験では、回腸透過性(小腸の第3および最終部位)も調べました。その結果、処理区2、3では、処理区1の豚と比較して、腸透過性が大きいことが分かりました。この結果から、暑熱ストレスや飼料不足などの飼料摂取量が制限される時期(処理区2)には腸管の透過性が高まる(リーキーガット)危険性が高いことが示唆されました。

 

豚が急性暑熱ストレスに曝された時に、アベイラ亜鉛を給与することで、硫酸亜鉛を給与した場合と比較してリーキーガットの発生を低減させることに役立ちました。また、アベイラ亜鉛を給与することで、より効果的な免疫反応を獲得することも出来ました。更に、暑熱ストレス下の豚にアベイラ亜鉛を給与すると、硫酸亜鉛を給与した場合と比較して、血漿中のLPS結合タンパク質発現が増加しました。急性期タンパク質であるLPS結合タンパク質は、細菌のLPSを補足することで、他の免疫因子によってLPSを破壊することが出来ます。アベイラ亜鉛を給与した暑熱ストレス下の豚(処理区4)は、硫酸亜鉛を給与した場合(処理区3)と比較して、血清中のエンドトキシン量の数値が減少しました。

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暑熱ストレスとジンプロ・ミネラル:全ては関係がある

暑熱ストレスは、養豚現場において制御する必要のある深刻な問題です。動物の生産性に長期的な影響を及ぼす暑熱ストレスを抑えるためには、気温が上がる前から準備をすることが重要です。アベイラ亜鉛の様なジンプロ・ミネラルを養豚飼料に添加することで、暑熱ストレス下のリーキーガットの影響を軽減することが出来るでしょう。

養豚飼料に添加する亜鉛源の選択が、暑熱ストレスを軽減するために重要であることが試験から明らかになっています。暑熱ストレスと炎症を抑えるためにアベイラ亜鉛を養豚飼料に添加することの利点に関してのご質問、ご相談は弊社営業担当者までお問い合わせ下さい。

 

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